ベトナムにおける弁護士 オリバー マスマン:一般企業のM&A

ベトナムが2007年に世界貿易機関(WTO)の正式メンバーとなってから、ベトナムにおけるM&A活動は着実に成長しています。最初のベトナムにおけるM&Aの波は2008年~2013年の期間に起こり、総価格は150億米ドルと報告されています。日本の投資家は2012年におよそ12億米ドル相当の取引をしています。日本は量及び価値の両方の面に関して、ベトナムのM&A取引のための主要国です。これにより2012年にベトナムのM&A市場が51億米ドルの最高額に達しました。不動産はM&A取引の総価格が20件の取引で16億3700万米ドルまで達し、ベトナムの外国人投資家によるM&A価値は全体の69%を占め、最も魅力的な分野だと考えられています。小売、消費財、産業財及びサービス部門もまたM&A取引において高価値で非常に活発な分野となっています。

ストックプラス社が行った調査によると、ベトナムのM&A市場は2014年に大きく回復し毎週6件の取引が報告されています。2015年にはM&A取引が合計341件あり、価格が52億米ドルとなり、取引件数は23.1%増加し、前年と比べて取引価格が9.7%上昇しました。

株式会社のコントロールをする為には?

株式会社に対するコントロールを得るために最も一般的な方法は以下の通りです。

o 株式/定款資本の買収を通して

o 同社の既存株主から株式/定款資本を購入

o 証券取引所で上場企業の株式/定款資本を購入

o 公開株式購入オファー

o 合併を通して。2014年企業法では、合弁会社へ全ての合法的な資産、権利、義務そして利益を譲渡する方法で企業合弁する手順及び、合弁している企業の同時終了のための手順が述べられています。

o 資産の買収を通して

外国人投資家は地場企業の株式/定款資本の購入に対して制限があります。さらに、外国人投資家が当事者にあたる場合、合併または資産買収取引は法律で禁止されています。

公開企業の証券は取引前にベトナム証券保管振替機構にて登録及び保管しなければなりません。

株式数の購入に応じて、投資家は支配株主になることができます。ベトナム証券法に基づき、直接的、または間接的に発行機関の議決権株式を5%以上保有する株主は大株主になります。証券会社の払込み済み定款資本を10%以上保有する取引は国家証券委員会(SSC)の承認を求めなければなりません。

入札者が一般的に入札を行う前に疑問に思うこと

正式に可能性のある対象企業に連絡をする前に、入札者はに公に入手可能な情報をもとに事前評価を行います。入札者は次に対象企業へ連絡を取り、株式を購入/株式に応募する意向を表し、当事者はデューデリジェンスの前に機密保持契約を締結します。機密保持契約は原則的に取引を行う際の守秘義務を含みます。ベトナムの裁判所による機密保持契約の施行はまだ試されていないままです。

入札者の法的なデューデリジェンスは次の事項が含まれます。

  • 対象企業やその子会社、関連会社及び対象企業の一部である他企業の企業詳細
  • 偶発債務(過去または紛争中の訴訟)
  • 雇用問題
  • 対象企業の契約上の同意
  • 対象企業の事業活動に関しての法定の承認及び許可
  • 保険、税金、知的財産、債務及び土地関連の問題
  • 独占禁止、腐敗及びその他の規制問題

主要株主の株式譲渡に対する制限

創立株主は唯一企業登録証明書の発行から3年以内に会社の別の創立株主へ株式を譲渡することが出来ます。その後、株式を自由に譲渡することができます。株主総会での内部承認が常に必要な際は以下の場合です。

  • 企業が新株式を発行することにより資本を増加する場合。
  • 上記3年以内に創立株主の株式譲渡する場合。

販売及び購入が株式発行に関して企業と売り手の間で直接契約している場合、販売価格は販売時の市場価格よりも低く、あるいは市場価格が存在しない場合は株式を売るための計画承認時の株式の簿価よりも低くなくてはなりません。さらに、国内外のバイヤーに販売価格が同じでなければなりません。

公開買い付けが必要になる時?

公開買い付けは以下の場合必要となります。

  • 株式保有が無いあるいは25%以下の株式保有で、購入者が25%以上の株式を買収する企業の循環株の購入。
  • 25%以上の株式を保有し、(購入者の関連者など)購入者がさらに企業の循環株の10%以上を買収する企業の循環株の購入。
  • 25%以上の株式を保有し、(購入者の関連者など)購入者がさらに以前のオファーの完了日から1年未満に企業の現在の循環株の5~10%を買収する企業の循環株の購入。

金融派生商品を使用することによる利益構築に関するガイダンスはありません。さらに、入札者は公開買い付け期間中に株式を購入することや、購入権を外部提供者へ共有することはできません。

入札者は公開買い付けを電子新聞、新聞及び(上場企業の場合のみ)証券取引所の3連続版に、公開買い付けの登録に関する国家証券委員会(SSC)の意見を受理してから7日以内に公表しなければなりません。SSCが意見を提供し、入札者によって以下が公表された後に公開買い付けは実行されます。

入札を公開すること

申し込みタイムテーブルは以下の通りです。

  • 入札者は株式を購入するため公開入札の書類を準備します。
  • 入札者はSSCへ承認を得るために入札登録証を送り、同時に対象企業へ登録証を送ります。
  • SSCは7日以内に入札書類を確認します。
  • 対象企業の取締役会は入札書類の受領後から14日以内にSSC及び対象企業の株主へオファーに関する意見を渡さなければなりません。
  • 入札はマスコミへ公表されます。(法的要件ではありません)
  • 募集期間は30日~60日間です。
  • 入札者は完了してから10日以内にSSCへ入札の結果を報告します。

銀行や保険などの特定の分野における事業を行う企業は、異なるタイムテーブルを受けることができます。

対価の形と最低水準

ベトナムの法律に基づき、株式は現金、金、土地使用権、知的財産権、技術、技術的なノウハウやその他の資産を提供することにより購入することができます。実際に、買収は一般的に現金で行われています。

国営企業の完全買収の場合、株式購入の為の最初の支払いは該当株式の価格の70%以上で12ヶ月以内に残金を支払わなくてはなりません。

国営企業による株式の競売を含む譲渡において、購入者は対象企業の規定に含まれる入札日の最低5営業日前までに最低競売価格に基づいて購入予約の為、株式登録の価格の10%支払わなければなりません。

さらに、購入者は競売結果の発表10営業日以内に競売を行う機関の銀行口座へ株式の全報酬を譲渡しなれければなりません。

公開株式の場合、公開株式買い付け為に任命された証券代行会社による株式の支払い及び譲渡は政令58/2012/ND-CPに従って行われます。

企業の上場廃止

企業が自主的に上場を廃止する場合は、以下の書類を含む上場廃止に関する申請書を提出しなければなりません。

  • 上場廃止のための依頼書
  • 合弁会社の場合

o 株主総会で株式の上場廃止の承認

o 債券の上場廃止に関する取締役会の承認

o 転換社債の上場廃止に関する株主総会の承認

  • 債券の上場廃止に関する(複数人から構成される有限会社の)社員総会または(1人有限会社の)企業のオーナーの承認。
  • 証券投資ファンドに関しては、ファンドが持つ証券の上場廃止の投資家による議会承認。
  • 公共証券投資企業に関しては、株式上場廃止の株主総会の承認。

上場廃止が主要株主以外の議決権の50%以上で可決された株主総会の決定によって承認される場合、上場企業は唯一証券の上場廃止をすることができます。

企業が自主的にハノイ証券取引所またはホーチミン証券取引所へ上場廃止を申請する場合、上場廃止に関する申請書類は株主または投資家の利益への対応策を含めないといけません。それぞれハノイ証券取引所またはホーチミン証券取引所は有効な申請書類の受領から10~15日以内に上場廃止の為の要請を検討しなければなりません。

企業の株式売却に関する譲渡の支払い

売り手が個人か企業かによって次の税金が適用されます。

  • キャピタルゲイン税。キャピタルゲイン税は資本に対する投資家の実際の利益、あるいはその資本を購入するための費用を支払う外資企業及び地場企業は20%の法人税が対象になります。しかしながら、資産譲渡が証券の場合は外資企業の売り手は総譲渡価格の0.1%の法人税が対象になります。
  • 個人所得税。売り手が個人の居住者の場合、個人所得税は利益の20%が対象となり、もし資産譲渡が証券の場合販売価格の0.1%が対象です。所得税を支払う居住者は以下に定義された人です。

o 暦年内で183日以上ベトナムに滞在する人

o ベトナムで12ヶ月連続して滞在する人

o ベトナムで永住権を保有している人

o 課税年度中に賃貸契約に基づきベトナムで最低90日家を賃貸している人

売り手が個人で非居住者の場合、キャピタルゲイン税の有無に関係なく総譲渡価格の0.1%が個人所得税の対象となります。

上記の譲渡税の支払いはベトナムでは必須です。

規制当局の承認

投資家は下記のいずれかの場合、株式の出資及び購入の際に登録する必要があります。

  • 対象企業が2015年投資法で言及された267の条件付き分野の一つである場合。
  • 対象企業の定款資本の51%以上を保有する外国人投資家による株式の出資及び購入。(特に51%以下から51%以上、51%から51%以上になる場合)

対象企業が所在する現地の計画投資省では有効な登録申請の受理から15日以内に最終承認の発行をしなければなりません。しかしながら、実際にはこの手続きは特定中央当局の作業負荷及び不透明なガイダンスにより数ヶ月かかっています。従って、登録要件は全体のM&A手続きにかなりの遅れが生じる可能性があります。

他の例では、対象企業は企業登録部門で会員または株主の登録変更をする必要があります。

利益の本国送還または外資企業のための外国為替規制に関する制限

ベトナムにおける対象企業が既に投資証明書を保有している場合、ベトナムの許可銀行で直接投資資本勘定を開かなければなりません。外国人投資家による株式購入のための支払いはこの口座を通して行われます。この口座はベトナムドンまたは外貨建てで行えます。さらに、外国人投資家がオフショア投資家の場合は、ベトナムの商業銀行にて売り手の口座へ支払い及び利益を受け取るための資本口座を開設する必要があります。

ベトナムにおける対象企業が投資証明書を保有していない場合、外国人投資家は売り手への支払い及び利益の送金の為に間接投資資本勘定を開く必要があります。

〈ご注意〉こちらの記事は皆様に情報をお届けする目的でのみ作成・掲載しておりますので、法的なアドバイスとして提供・構成することを目的としておりません。詳細につきましては、当法律事務所の注意書きをご一読下さい。

オリバー・マスマンはドウェイン・モリス・ベトナム法律事務所のディレクターです。上記に関するご質問等はomassmann@duanemorris.comまでお気軽にご連絡ください。

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